専門ドクターに聞く【福岡輝栄会病院】狭心症・心筋梗塞

2019年9月28日(土)

狭心症・心筋梗塞について【福岡輝栄会病院】大塚 頼隆 先生にお話を伺いました。

冠動脈の詰まりによって起こる「狭心症」や「心筋梗塞」。早めの発見・治療が肝心です。

加齢とともに起こる動脈硬化が引き金に

心臓は全身に血液を送るポンプとして働きますが、心臓自体にも酸素や栄養が必要です。心臓に酸素や栄養を運ぶ血管が冠動脈。人間は加齢に伴い、血管に脂肪が付着し、動脈が硬くなったり、または狭窄したりする動脈硬化が起こります。

冠動脈に動脈硬化が起こり内腔が狭くなると、運動中に冠動脈が供給する血液が不足し、胸が苦しくなったりすることがあります。これが「狭心症」です。狭心症には主に安定狭心症と不安定狭心症があります。安定狭心症は、運動すると症状はあるものの増悪がありません。

一方、不安定狭心症は、徐々に運動できる範囲が少なくなったり(閾値の低下)、発作の頻度が増えたり、何もしていないのに発作が出現したりするなど、明らかに狭心症の症状が悪化しているものを指します。この不安定狭心症は、心筋梗塞に近い病状で、突然死のリスクもあるため、早急な治療が必要です。

心筋梗塞は、冠動脈の動脈硬化がなんらかの原因で急に破綻し、その部位に血栓(血の塊)ができ冠動脈の血流を完全に塞いでしまうために起こる病気です。血流がなくなり、30分以上も心臓の筋肉に酸素や栄養が行き届かなくなると、心臓の筋肉は壊死します(心筋壊死)。心臓の筋肉が壊死してしまうと、不整脈が出たり、心臓のポンプとしての機能が低下し、心不全が起こりやすい状態になります。

高血圧や生活習慣病など持病のある方は要注意

動脈硬化の原因である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙や近親者に心臓病の方がいる家族歴のある方は要注意です。

最近では、これ以外にも生活習慣病の高尿酸血症、慢性腎臓病などもリスクと考えられています。性別では男性が8割と多く、女性は2割程度と少ないです。しかし、女性は閉経後から動脈硬化が進行しやすく、高齢化の日本においては女性の割合が増えてきています。

胸が苦しくなる「胸痛」など前兆を感じたらすぐに受診を

典型的な症状はどちらとも胸が痛くなる胸痛です。ほかに胸部圧迫感、胸部絞扼感、胸部違和感、息切れ、息苦しさ、呼吸困難などのさまざまな症状で発症することもあります。また、胸の症状ではなく、喉が詰まったり、左肩の痛みが出たりすることもあります。

また、10人に1人程度は症状がない、無症候性心筋虚血の方も。特に高齢者や糖尿病の方に多く、注意が必要です。30分以上症状が持続する場合は心筋梗塞を疑います。心筋梗塞の方が狭心症よりも症状が強く、冷や汗などを伴います。また、狭心症のような症状の前兆がある方が半分、あと半分は突然起こるので、前兆がなくとも注意が必要です!

軽度であれば薬物治療。状況に合わせて外科的手術や負担の少ない内科的手術も。

治療法は薬物療法や手術。再発防止にも留意を

治療法については、狭心症の場合ですと、薬物療法(症状を緩和する)、経皮的冠動脈形成術(狭窄している冠動脈を拡げる)および冠動脈バイパス手術(外科的に狭窄している冠動脈の先に新たに血管をつなげる)があります。

私の専門である内科的手術、経皮的冠動脈形成術は、40年前から始まった治療法で、外科的手術に比べて低侵襲な治療法です。手首や足の付け根の血管にカテーテルという細い管を挿入し、そのカテーテルを通して風船やステントといわれる金属性の金網で冠動脈の狭窄を拡げ、症状を改善させます。状況によっては外科的手術がいい場合もありますので、主治医とよく相談してください。

心筋梗塞は、いち早く冠動脈の閉塞を解除させる必要があります。それには、すぐに治療できる経皮的冠動脈形成術が非常に有用です。一度、狭心症や心筋梗塞になると再発するケースが多く、厳密な薬物療法が必要です。生活習慣病の治療をしっかり行うことと、禁煙や運動療法などの地道な努力も。

状態によって治療の基準が違いますので、かかりつけ医とよくご相談されてください。

大塚 頼隆 先生

医学博士。日本内科学会認定医。日本心血管インターベンション治療学会専門医・代議員。日本冠疾患学会評議員・特別正会員(FJCA)。
米国心臓病学会特別正会員(FACC)。ヨーロッパ心臓病学会特別正会員(FESC)。久留米大学心臓血管内科客員准教授。

企画・制作/西日本新聞社メディアビジネス局

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