専門ドクターに聞く【福岡輝栄会病院】脳卒中の前兆

2019年9月29日(日)

脳卒中の前兆について【福岡輝栄会病院】鈴木 聡 先生にお話を伺いました。

鈴木 聡 先生

最近知り合いが脳卒中で倒れ、不安になりました。脳卒中にはどんな前兆がありますか?

A.突然襲ってくるのが脳卒中。呂律が回らない、激しい頭痛、半身の違和感を感じたら救急車!

脳卒中とはどんな状態で起こるものでしょうか。

鈴木先生:脳卒中とは、脳の血管のトラブルによって、「急に」症状が出る病気です。急にといっても、突然起こることもあれば、何時間かかけてじわじわ進行する場合もあります。例えば、脳の動脈にできた瘤(脳動脈瘤)が破れて起きる「くも膜下出血」は突然起こるのが特徴です。一方、脳の血管の中に血の塊である血栓がゆっくりでき、脳の血管が詰まる「脳血栓症」では手足が動かしにくいなどの症状が、時間をかけてだんだん強くなります。

脳の血管が詰まった場合、症状が一時的で元に戻ること(TIA)もありますが、多くの場合は神経細胞が死んで脳梗塞になってしまいます。脳梗塞でも「かくれ脳梗塞」のように症状が出ず、いつの間にか脳梗塞ができている場合もあるため、自分ではなかなか気づきにくいといわれています。

脳卒中の症状、対応について教えてください。

鈴木先生:先ほど述べたTIAは本格的な脳卒中の前兆といえるかもしれません。頻度としてはあまり多くありませんが、脳動脈瘤の一部では破裂する前に周囲の脳神経を圧迫して症状が出ることがあります。

脳卒中の症状としては、体の半分に力が入らない、しびれる、呂律が回らない、言葉が出ない、目の見え方が変、耐え難い頭痛などがあげられます。 米国脳卒中協会が行う「ACT FASTキャンペーン」をご存じでしょうか。「ACT」は「する」という意味で、F = face(顔がゆがんでいないか)、A=arm(片方の腕があがらない)、S=speech(呂律が回っていない)、T=time(時間が勝負)という4文字でうまく言い表しています。

脳卒中の対応は時間との勝負です。あなたやあなたの周りの人に先ほど述べたような症状がみられたら、急いで救急車を呼び、専門医のいる病院に連れて行ってもらいましょう。

脳卒中になりやすい人やなりやすい既往症などありますか。

鈴木先生:脳卒中には「危険因子」があることが知られています。いろいろな問題が積み重なることで、脳卒中の可能性が増すといわれています。高血圧、糖尿病、コレステロールの異常という三大生活習慣病のほかに、睡眠時無呼吸症候群、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病を有する方は、脳卒中の「ハイリスク群」として厳重な管理が必要です。

「心房細動」という不整脈があると心臓の中に血栓ができ、それが脳や全身の血管に飛んで「塞栓症」を起こす危険が増します。心房細動が原因で起こる「心原性脳塞栓症」は、脳梗塞の中でも重症であることが多いとても恐ろしい病気です。また、規則正しい生活とバランスのとれた食事が大切であることはいうまでもありません。

嗜好品、食事など毎日の生活で気をつけることはありますか。

鈴木先生:喫煙は脳卒中予防の天敵です。他人が吸ったタバコの煙を吸う「受動喫煙」も脳卒中の危険因子となります。お酒についても、脳卒中を予防するためには、過度な飲酒は避けるほうがよいでしょう。もちろん、長い人生すべて節制ばかりだとつまらないものですから「たしなむ程度」に楽しんでください。

厚生労働省の統計によると、現在日本人の死亡原因で「がん」「心臓病」に次いで3番目に多いのが、「脳卒中」です。死亡原因としては3番目ですが、寝たきりの原因としてはナンバーワンという恐ろしい病気です。長生きというのは健康でいてこそ楽しめるものです。寝たきりで長生きすることが果たして幸せなのでしょうか。脳卒中は予防が肝心です。生活習慣病を治療することや喫煙などの習慣を断つことによって多くの脳卒中を予防することができます。塩分を控える、脂っこいものを避ける、継続できる運動をする、水分をしっかりとるなどできることから始めてみてはいかがでしょう。

脳卒中かな?と思ったら

「顔・腕・言葉」これら3つのチェックのいずれかで異常があれば、症状が出た
時刻の確認(発症から○時間) 、そしてすぐに救急車を呼んでください。

□ 顔
ニッコリ笑うと口や顔の片方がゆがむ

□腕
手のひらを上に両手を前方にあげ、5 つ数える間に、 片方の腕が下がる

□言葉
「今日は天気がよい」とうまく言えない

脳卒中を判断するのは、医師だけではありません。 あなたの「この人、脳卒中かもしれない!」という判断とすぐに 救急車を要請する行動が、迅速な脳卒中治療に結びつきます。

参照:公益社団法人日本脳卒中協会 福岡県支部「福岡から 脳卒中ゼロをめざして」

鈴木 聡 先生

福岡輝栄会病院:鈴木 聡 先生

埼玉県出身。九州大学医学部卒業。米国ヴァージニア大学にてくも膜下出血後脳血管攣縮の基礎研究を行う。「標準的医療の実践」と「最新の知識とテクノロジーの臨床への応用」がモットー。日本脳卒中学会専門医・評議員、日本脳卒中の外科学会技術指導医。

企画・制作/西日本新聞社メディアビジネス局

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