専門ドクターに聞く【坂口耳鼻咽喉科】蓄膿症(副鼻腔炎)

2019年9月28日(土)

蓄膿症(副鼻腔炎)について【坂口耳鼻咽喉科】喜瀬 祥啓 先生にお話を伺いました。

喜瀬 祥啓 先生

風邪がなかなか治らない、ドロドロの鼻水が出る、顔が痛む。そんなときは早めに耳鼻科へ。

蓄膿症( 副鼻腔炎) とは?代表的な症状は?

「蓄膿症」と呼ばれる疾患は、正式な病名を「副鼻腔炎」といい、顔の奥にある副鼻腔という場所に炎症が起こり膿が溜まっている状態のことを指します。

副鼻腔は、頬や目、おでこの奥などに存在しています。鼻腔とつながっていますが、入口が非常に狭いため鼻水などで詰まりやすく、いったん詰まってしまうと中にどんどん膿が溜まってしまいます。

副鼻腔炎はウイルスや細菌が原因で起こることが多く、はじめは粘っこい鼻水が出たり、鼻が詰まったりといった症状から始まり、進行すると頬やおでこの痛み、発熱を伴うこともあります。初期症状時に抗生剤などで適切な治療を受ければ、1〜2週間程度で治っていくケースがほとんどです。

初期(急性期)のうちに受診しておかないと、治りにくくなる場合があります。改善が見られずに3ヵ月以上続いてしまうと、「慢性副鼻腔炎」として症状が長期化する傾向が見られます。

近年は、難治性の好酸球性副鼻腔炎が増加

気をつけていても、慢性副鼻腔炎になりやすいタイプの方もいらっしゃいます。一つは骨格の問題で、例えば、両方の鼻の穴を隔てる「鼻中隔」が大きく曲がっている方や、副鼻腔の入口がつまりやすい方などは、慢性化する頻度が高くなります。

アレルギー体質だと粘膜が腫れぼったくなりますので、春先には季節性アレルギーがきっかけで副鼻腔炎になった方がよくいらっしゃいます。この場合、同じ症状を何度も繰り返したり、治療をしてもなかなか治らないケースが多いですね。

また、2000年以降は「好酸球性副鼻腔炎」という難治性の副鼻腔炎も増加しています。これは原因は特定されてはいないものの、アレルギー体質や喘息との関連も指摘されるタイプの副鼻腔炎で、ポリープができやすいことも特徴です。通常の慢性副鼻腔炎の薬に抵抗性があり再発を繰り返すため、国の難病にも指定されている、大変悩みの深い病気です。

「蓄膿症の手術はつらい」はもはや過去の話。現在の手術では患者さんの負担は最小限で済みます。

副鼻腔炎の治療法は?服薬で治るのでしょうか

副鼻腔炎の治療にあたっては、一般的に抗生剤と症状に合わせた痛み止めなどの薬を使いながら進めていくことになります。急性期のうちは治りやすく、中でも子どもの場合は早めに治る傾向があります。

しかし、急性期であっても激しい症状が出ることもあります。頬やおでこがパンパンに腫れたり、副鼻腔以外にも炎症が及んで目が真っ赤に充血したりというケースも見られます。非常に稀ではありますが、炎症が脳にまで波及する例もあり、その場合は緊急入院と抗生剤の投与・手術が必要です。

副鼻腔炎かなと思ったら、まず早めの受診と治療で慢性化・重症化を防ぐことが大切です。また、副鼻腔炎のほとんどは風邪の症状から始まるため、体調の悪いときには無理をせずしっかり休養をとるようにしましょう。

なかなか治らない場合には手術という手立ても

副鼻腔炎が慢性化してしまい、なかなか治らない場合には副鼻腔を解放し、膿がたまらないようにする手術が有効です。特殊な手術ではなく身近なもので、当院でも年間1000例以上の手術を行っています。全身麻酔を使うため基本的に1〜2泊の入院が必要ですが、日帰りでも受けることができます。

鼻の手術は苦しいといわれるため、心理的な抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。確かにひと昔前の術式では歯の根っこを切開していたため腫れがひどく、回復にも時間がかかっていました。しかし、今は鼻からの内視鏡で全てが済むので必要最小限の負担で最大の成果が得られます。

手術を受けることで、これから先の長い苦しみから解放されるというメリットは大きなものです。

症状Check

初期にはただの風邪として済ませてしまうようなケースが多いのですが、特徴である「顔の痛み」が出たら要注意。頭が
痛いように感じる場合もあります。また、鼻詰まりに伴う味覚・嗅覚の障害症状にも気をつけましょう。症状に気づいたら早めの受診を。

□風邪が2週間以上、治らない
□ドロッとした鼻水が出る
□最近、ニオイがわからなくなった
□食べ物の味がハッキリしない
□常に気になるニオイを感じる
□ほっぺたの奥に痛みがある
□目やおでこの奥の方に痛みがある
□後頭部に痛みを感じる

喜瀬 祥啓 先生

坂口耳鼻咽喉科:喜瀬 祥啓 先生

産業医科大学医学部卒業。同大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科入局後、九州労災病院勤務を経て、産業医科大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科助教。現在は鼻の疾患の専門医として、坂口耳鼻咽喉科で診療に当たる。

企画・制作/西日本新聞社メディアビジネス局

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