【九州産業大学】九州のアスリートたちを支援する「スポーツ科学」の研究・実践拠点を目指して

2020年12月23日(水)

 九州産業大学は2020年11月、コカ・コーラボトラーズジャパンのラグビー部でありトップチャレンジリーグ加盟チームの「コカ・コーラレッドスパークス」との間に、共同研究契約(アドバイザリー契約)を締結しました。人間科学部スポーツ健康科学科の知見を活かして、レッドスパークスのチーム強化及び選手のレベルアップを図ると同時に、大学側は共同研究の過程で得られた各種データを、今後の研究活動や地元スポーツシーンの振興に活かす計画です。

最先端の解析・測定機器類をフル活用

 2018年4月、「人を支える人」の育成を目指す『人間科学部』を新設した九産大。公認心理師や保育士、保健体育教員などを目指す学生たちに専門的な学びの場を提供すると同時に、スポーツ科学の観点から、九州で活躍するアスリートを支援する活動を展開しています。

 今回のレッドスパークスとの共同研究契約も、その活動の一環。同大学は昨年、福岡市をホームタウンとするJリーグチーム「アビスパ福岡」と同様のアドバイザリー契約を締結していますが、ラグビーチームとの契約は、今回のレッドスパークスが初めてのこと。  トップリーグ及びトップチャレンジリーグのラグビーチームの中でも、チーム強化のために大学と契約した例は他にありません。チームにとってはもちろん、共同研究に携わる人間科学部の学生たちにとっても、新境地に向けた第一歩を踏み出したわけです。

 今後、同大学の新施設「大楠アリーナ2020」の解析・測定機器類をフル活用し、レッドスパークス選手の有酸素能力と無酸素パワー、間欠的パワーなど「生理学的測定」、最大筋力と体幹筋力、スピード筋力など「バイオメカニクス測定」を定期的に実施。得られたデータを基にスポーツ科学の視点から、チーム強化やチーム運営に有益と思われるアドバイスと、情報の提供を行います。

 レッドスパークス側も、同大から提供された測定データやアドバイスを活用しながら、トレーニングメニューなどの改善を図るほか、インターン受け入れによる学生キャリア支援、講演・研修等への参加協力を行います。

 スポーツ科学分野の最先端機器と施設を有する九産大だからこそ実現できる、アスリート支援の新しい形と言えるでしょう。

地域貢献にも配慮した「大楠アリーナ2020」

 トップアスリート支援の“拠点”となる大楠アリーナ2020は、今年春に竣工したばかりの複合スポーツ施設。


 メインフロアである2階アリーナは、公式バスケットボールコートが4面同時に設置できる西日本最大級の規模(3715㎡)を誇るほか、1階には各種競技の練習室として利用する9室の多目的室、アスリートの基礎体力向上とコンディション調整を図ることができる動作解析室、人体計測室、運動心理学実験室、スポーツ医学実験室、運動生理学実験室、バイオメカニクス実験室、フィットネススタジオなどを設置。3階にはストレングス&コンディショニングゾーン、ランニングコースなどが設置されています。


 2階アリーナは約5000人を収容できる大型ホールとして、同大学の学位授与式や入学式などでも利用するほか、地元スポーツチームなどにも開放し、地域スポーツ大会などを開催できる地域社会との連携拠点として活用。災害時に使用できる「かまどベンチ」「マンホールトイレ」などを施設周囲に設置し、自然災害の発災時には地域避難所として利用できるよう配慮している点も、同施設の特徴の1つです。

 共同研究契約の締結により、レッドスパークスの選手たちと同大トップアスリートスポーツ科学支援チームは今後、この施設を活用しながら、選手のパフォーマンス向上やスポーツ教育のレベル向上のための共同研究を推進します。

予備調査をベースに研究項目をグレードアップ

 共同研究契約の締結前、九産大とレッドスパークスは約2ヵ月間の「予備調査」を実施。体組成計を用いた骨格筋量や体脂肪率の測定、マルチジャンプテスタによるジャンプ力やバネ能力の計測、ラグビー日本代表チームも持久力テストとして実施しているBRONCO Test(20m・40m・60mシャトルラン)などを通じて、各選手のスポーツパフォーマンスを数値化する調査を行いました。

 共同研究スタートの記者発表に出席したレッドスパークスの向井昭吾部長兼監督は、「ラグビー選手は選手生命が短い。強いチームを作ることも大事ですが、『無事是名馬』と言われるように、怪我をしないことが何よりも重要です。選手育成を効率化しながら、怪我をしにくい・怪我をしても早期復帰できる身体づくりを進める上で、スポーツ科学を駆使することが非常に大切と考えています」「怪我をしにくい身体を作るためには、栄養と休息とトレーニングとのバランスを適正化せねばなりません。九州産業大学との共同研究を通じて、トレーニングとモニタリング、フィードバックを繰り返すことで、福岡発・日本一の育成型クラブを目指します」と宣言。

 同じく記者発表席上で、共同研究代表者である人間科学部の西薗秀嗣教授は、「中学校・高校の強豪チームを擁する福岡は、まさにラグビー王国。日本一のチームを地域で育成するとの想いを持って、今後の共同研究を進めます」「本学スポーツ健康科学科で教鞭を執る、スポーツ生理学やスポーツバイオメカニクスの専門家たちが、それぞれの専門領域の知見を活かしながら、選手の様々な動作の分析や測定、診断を行い、それらデータをどのように活かすかを模索します」など、今後の研究方針を発表しました。


 当面は、前述の予備調査メニューのデータ測定を継続しながら、各選手の特徴や身体の動かし方に合わせた新たな研究項目を設けていく計画。また、同大は研究によって得られる様々なデータを、他の地元スポーツチームへの提言・提案に応用するなど、地域密着型の活用法も検討する方針です。

<九州産業大学>
 

 九州産業大学は、人文・社会・理工・芸術系の学部を有する西日本有数の総合大学です。広大なキャンパスで、約10,000人の学生が学んでいます。“産業と大学は車の両輪のように一体となって時々の社会のニーズを満たすべきである”という建学の理想「産学一如」のもと、社会で活躍できる人材の育成に取り組んでいます。

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