【西南学院大学が外国語学部新設】外国語で「理解し合える」能力を目指して

2019年12月4日(水)
外国語を習得することで自身のアイデンティティが見えてくる

 伝統ある文学部を改組し、2020年4月より「外国語学部」を新設する西南学院大学。外国語を学び、多様な人々と相互に理解し合い、国際社会において主体的に貢献できる『真の国際人』育成を目指す学部です。ニコラウス・コペルニクス大学(ポーランド)から移籍し、西南大の外国語学部に着任予定のユスチナ.W.カシャ准教授に、新学部での指導方針や外国語を習得する意義について聞きました。

自分自身の学習経験を基に「基礎」を重視した講義内容に

–カシャ先生から見た、日本とヨーロッパにおける外国語教育の違いは

 ポーランドでは、初等教育の段階から英語が義務教育に組み込まれています。日本でも、近年は小学生の段階から英語を学ぶようになりました。「学習の厳しさ」という点では、ポーランドは世界でもトップクラスです。

 日本の場合、“一夜漬け”で試験にパスすることができますが、ポーランドでは中学、高校と段階的な英語テストをクリアしなければなりません。高校卒業までに一定レベルの外国語能力を身につけていないと大学には入れません。だから学生たちは、常に淡々と外国語を勉強し続けるわけです。ポーランドに限らずヨーロッパの国々も、外国語教育に対して同様の体制だと思います。

–幼少期を日本で過ごしたそうですが、帰国後に言語で苦労した経験は

 来日したのが2歳で、その後、日常生活では日本語ばかり使っていたので、帰国当初は大変でした。
 勉強して単語が理解できるようになっても、ポーランド語は動詞の格変化が複雑なので、先生が喋っていることが理解できず、文章問題も意味が分からない。だからこそ、外国語を習得するには、まず「基礎」が重要だと言い切れます。

 “丸暗記”の学習法を否定する意見もありますが、暗記を通じて単語や文法などの基礎を固めなければ、より高度な言語能力は築けません。私の場合、高校は私立学校に通い、英語だけでなくフランス語とラテン語も学びましたが、いずれの外国語でも、やはり基礎をしっかりとマスターすることの大切さは変わらないと感じました。

一方的に話すのではなく、学生との対話形式で
講義を進めるカシャ先生

–そうした経験をもとに、外国語学部ではどのような教育を行いますか

 大切なのは、どのように勉強することが自分に最も適しているかを、自分自身で気づくこと。「このやり方が自分に向いている」と発見できれば、学習の能率も上がるし長続きします。
 入学直後の1年生に対しては、自分に向いている勉強法を気づかせることが、私のミッションになるでしょう。そして次の段階では、個別指導に近い教育体制を作るため、教員と直接外国語を使って話せる時間を設けようと考えています。

 同時に講義中は、私が色々な質問を投げかけ、それについて小グループやペアで話し合うスタイルを心がけるつもりです。1つのテーマについて他者と話し合うことで、クリティカル・シンキング(批判的思考)の力が身につきます。この力は、「真の国際人」を目指す上で必須のものですから、講義中に大いに討論できる環境を整えたいと思います。

言語を理解すれば異文化の「根源」まで思いが至る

 

カシャ先生の講義では、
意見を述べたい学生全てが「発言者」となります。

–外国語教育を強化する動きは他大学でも盛んですが、西南大のアドバンテージは

 「聞く・話す」能力を高めることが重要なのは確かです。ただ、語学スキルにコミュニケーション能力が加わらなければ、異文化の中で育った人々との相互理解は実現しません。“教科書通り”の語学力だけだと、意思疎通が図りにくいことが多いからです。

 欧米の多くの大学がそうであるように、西南大もかなり以前から、「コミュニケーション学」に取り組んでいると聞いています。新学部設置後も、コミュニケーション学専門の教員が中心となって、「GCS(グローバルコミュニケーションスタディーズ)」科目群を運営する計画です。コミュニケーション学の土台に立脚して語学スキルの育成を行える大学は、日本国内で西南大以外にないと思います。

–カシャ先生が考える、「高度な外国語教育を受ける」ことの重要性とは

 ひと言で言うと、『自己のアイデンティティと社会的役割が明確になる』ということです。
 人々の考え方や感じ方の「根底」には、生まれ育った国の文化や宗教があります。異なる言語、文化的背景を持つ人々と会話して交流すれば、相手の発言や行動から、その人の心の「根底」にまで思いを巡らせることができるでしょう。その体験の積み重ねを通じて、「自分と比べてどうなのだろう?」と、自身の根底にも考えが至るようになると思うのです。


 私の好きな作家であり、研究対象の1人でもある遠藤周作は、12歳の時に母親の勧めによりクリスチャンになりました。しかし、日本が戦時体制に突入している時代ですから、ある種の罪悪感や、キリスト教国に生まれ育った“まともな信者”に対する劣等感などにさいなまれ続けました。その思いは彼の作品の中でも、『似合わない洋服を着せられるようなもの』という表現でたびたび現れます。
 その後、独学でフランス語を学んで渡仏し、西洋のキリスト教と自分自身の“与えられた信仰”との関係をはっきりと知ることで、「日本的汎神性(※)」とキリスト教とは、必ずしも相容れないものではない、という思想にたどり着きます。

 私自身も、札幌に住んでいた頃は周囲の友人たちとの容姿の違いに悩み、ポーランドに帰国してからは、見た目はポーランド人なのに、ポーランド語をきちんと喋れない変わった子、という目で見られました。語学研修でフランスに滞在した時も、イギリスの大学で教鞭を執るようになってからも同様の思いを繰り返し、その中から『自分は何物なのだ?』という思いと向き合えるようになりました。

 つまり、外国語を習得して様々な国の人たちと交流するということは、自分自身のアイデンティティを浮き彫りにする行為でもあるわけです。日本の大学で英語やフランス語の指導を行うのは、私にとって初めてのことなので、色々なことにチャレンジしなければならないでしょう。その結果、私自身の教え方を軌道修正することもあるかもしれません。いずれにせよ、学生たちが社会に出た後、『西南大の外国語学部で学んだからこそ、今の自分がある』と思えるような教育を提供したいと考えています。(※ 万物のものに八百万の神が宿っているとする日本の神道的思想)

Justyna Weronika KASZA(ユスチナ・ヴェロニカ・カシャ)


1982年ポーランド共和国ワルシャワ市生まれ。日本語研究者である父の研究活動に伴い来日。2歳から8歳までを北海道札幌市で過ごす。帰国後、ポーランドのアダム・ミツキェヴィチ大学で演劇学と日本文学を学び、学士号と修士号を取得。セントラル・ランカシャー大学(英国)で日本語を教えながらリーズ大学(同)で博士号取得。その後、ニコラウス・コペルニクス大学で准教授就任。日本語、英語、ポーランド語、フランス語を使いこなす。

西南学院大学文学部は、外国語学部へ

 
 これまで文学部で培ってきた伝統を土台に、従来の1学部2学科から1学部1学科へ。語学、文学、コミュニケーション学など、外国語学部が強みとする多様な学問領域を自由に選び、横断的に学ぶことが可能になります。高度な語学運用能力と深く豊かな教養、異文化理解の心を武器に、卒業後は、国際社会の最前線へ。あなたと世界をつなぐ扉を外国語学部が開きます。

 

●外国語学部の詳細は外国語学部ホームページで確認を。
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