対馬の城下町を歩く
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文化の交差点
城下町厳原をそぞろ歩く。
九州最北端に位置する長崎県の離島・対馬には、ツシマヤマネコに代表される大陸系生物が生息するなど、独自の生態系が形成されています。また、7300年前の朝鮮半島系の土器に加え九州の黒曜石なども出土しており、その時代に対馬を起点とした九州と朝鮮半島の往来があったとも考えられています。さらに『魏志倭人伝』や『古事記』などにも登場する対馬は、国境の島として重要な拠点となっていました。
そんな対馬の歴史に触れられる場所が城下町として発展した「厳原(いづはら)」。7世紀から対馬の国府が置かれた厳原には、隆盛を誇った江戸時代の面影を中心に、さまざまな史跡を見ることができます。例えば対馬藩主宗家の菩提寺となる「万松院(ばんしょういん)」もその一つ。本堂には朝鮮国王からの贈り物や徳川将軍の位牌などが安置され、敷地内には歴代藩主の壮大な墓所(御霊屋・みたまや)が設けられています。そのほか、城下町の鎮守として今も愛されれる古社「厳原八幡宮神社」や対馬の歴史や自然史の資料を展示する「対馬博物館」などもあり、いろんな角度の対馬に出会うことができます。
1.対馬藩主宗家の菩提寺で1615年に初代藩主である宗義智(宗家19代)を弔うために創建した万松院。本堂には朝鮮国王から贈られた「三具足」も安置。2.万松院本堂横の百雁きと呼ばれる石段。 3.桟原城と合わせて厳原城とも呼ばれていた金石城の櫓門。現在は天守閣はなく、この復元された櫓門だけが残っている。 4.厳原には立派な石垣が至るところに残っている。 5-6.厳原の中心部に位置する厳原八幡宮神社。 7-8.町の至る所で朝鮮通信使の歴史を垣間見ることができる。
平常展示は「総合」「古代」「中世」「近代」「近現代」という5つのエリアで構成。仏教文物や古文書、出土品などの資料に加え、映像コンテンツも鑑賞することができ、飽きのこない展示構成となっている。また、特別展示も随時開催。
博物館を起点に対馬を巡れば、
より深い感動に出会える
日本が国として成り立つ7世紀ごろから「国境の島」となった対馬。古くは中国の史書である「魏志倭人伝」そして日本の「古事記」や「日本書紀」、「万葉集」などにも登場する対馬には、朝鮮半島や中国などの大陸との交流の軌跡が今も残っています。そんな日本の歴史や海外との交流と切っても切れない対馬の貴重な歴史資料を展示しているのが、2022年4月に開館した「対馬博物館」。ここでは古代から近現代までの対馬の変遷はもちろん、対馬特有の自然についても学ぶことができます。そんな対馬博物館の町田一仁館長に、博物館の見所について伺いました。
「見どころはココ! と、一言でお伝えするのは難しいのですが、展示を通じて対馬という場所を感じていただけたらと思います。対馬が日本と朝鮮半島や中国などの東アジアの国々との架け橋になっていたこと、また対馬と朝鮮半島にしか生息していない昆虫をはじめとした特色ある自然があることを一人でも多くの人に知っていただきたいですね」。歴史においても自然史においても日本と大陸の架け橋だった対馬。そのことを博物館全体で表現していると町田館長は話してくれました。
歴史を振り返ると日本と朝鮮半島の間ではたびたび緊張関係が生まれているように見えますが、長年研究を続けている町田館長はどのように見ているのでしょうか。
「歴史の中で争い事はどうしても目立ちますが、一方で争いがない時は普通に交流を続けているんです。スポット的に蒙古襲来や朝鮮出兵といった争いがあり、対馬が戦場にもなりました。しかし、それ以上に長い交流の歴史があったことも事実。その交流の中にこそ、対馬の人々の営みがあります。展示の中でもその営みについて感じていただきたいと思います」。
大陸との長い歴史を持つ対馬における日々の営みを感じてほしいと話す町田館長は、この博物館の役割りについてこう話しました。
「まず、対馬で生まれ育った人には、自分たちの故郷がどういう場所なのかというのことを博物館で学んでいただき、例え島外に出られるとしても対馬という故郷に誇りを持って活躍してほしいです。自分の故郷を知り、故郷に誇りを持っていただく、それが離島の博物館が担う使命だと考えています。また島外から来られる人には、『国境の島』の概要を博物館で理解していただき、ここを拠点に島の豊かな自然と歴史に触れていただきたいですね。この博物館が対馬を知る入口になればと思います」。
ここで知識を得て歴史に登場する名所や自然に足を運べば、対馬をもっと楽しむことができるはず。
対馬博物館
- 住所 厳原町今屋敷668-2
- 電話 0920-53-5100
- 営業 9:30 - 17:00(入館は16:30まで)
- 休館 木曜(祝の場合はその翌平日)、年末年始
- URL https://tsushimamuseum.jp/
- PROLILE
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町田 一仁 / 対馬博物館 館長
下関市生まれ。同市の文化財保護課長、歴史博物館館長などを務め、「朝鮮通信使に関する記録」を巡っては、日本の学術委員会副委員長として「世界記憶遺産」登録に尽力した。2019年に対馬市へ入庁。現在は対馬博物館と対馬朝鮮通信使歴史館の初代館長を務めている。
観光情報館 ふれあい処つしま
2015年5月に開業した対馬観光の拠点となる場所で、対馬藩家老だった古川家の長屋門を再現した建物になっている。館内には観光案内所のほか、対馬の特産を販売する「特産品の間」や郷土料が味わえる「つしにゃんキッチン」などを併設。レンタサイクルなども扱っている。
- 住所 厳原町今屋敷672-1
- 電話 0920-52-1566
- URL https://www.tsushima-net.org/
つしにゃんキッチン
2022年7月にリニューアルしたお食事処。郷土料理をアレンジしたワンプレートメニューがそろい、気軽に対馬の味を楽しめるのが魅力。対馬のアナゴを使う「あなごかつプレート」やその日の鮮魚を盛り合わせた「おさかなづくしプレート」が人気となっている。
- 住所 厳原町今屋敷672-1
- 電話 0920-52-1566
- URL https://www.tsushima-net.org/