海の職人

アナゴ漁は全国的に「地引網漁」によって行われることが多い。しかし地引網は海底を根こそぎ一気にさらうため幼魚も獲ってしまい水揚げ量の減少の原因となってしまう。対馬ではそれを避けるため、伝統的な「かご漁」でアナゴを収穫する。長兄の慎一さんが水揚げしたアナゴは、次男の順一郎さんが営む寿司店と三男の建太郎さんの加工場へ直送し、新鮮なまま調理される。

父と共に一からはじめた、
対馬のアナゴ漁

 黒潮系の水塊と東シナ海の沿岸水が混ざり合う対馬海峡が漁場の対馬は、日本を代表する水産資源の宝庫。古くから漁業も盛んで、さまざまな魚種が対馬から揚がります。中でも名物がマアナゴ。日本の食文化にとってなくてはならないマアナゴは、ふっくらとした食感が人気で、寿司や天ぷらでも欠かせない具の一つです。そんなアナゴを専門に漁獲する穴子船幸生丸の船長・築城慎一さんに、漁師になった経緯などを伺いました。
「私は対馬の高校を卒業後、父の事業を手伝いながら3年ほどサラリーマンをしていました。サラリーマンを退所後、父と二人で対馬で揚った魚の発送などを行う水産関係の仕事を立ち上げ、1998年から穴子漁をスタートしたんです。当時、対馬の大きなアナゴはそれほど人気がなく、売れない商品だったんです。なので、アナゴ漁をしながらアナゴが売れるように商品開発にも力を入れました。アナゴ漁に関しては始めた当初からアナゴを一尾ずつていねいに扱う『かご漁』を行っています」。築城さんは兄弟3人でアナゴの魅力を発信。長兄の慎一さんは漁業者として、次男の順一郎さんは寿司職人、三男の建太郎さんはアナゴの加工品の製造でそれぞれ活躍。3人が連携し、対馬のアナゴを全国に広めています。

すし処 慎一