里山の守人
自然共生社会の実現に資するプロジェクトをコーディネートするMITでは、佐護ヤマネコ稲作研究会やツシマモリビト協議会の事務局を運営している。環境省や対馬市からの計画策定や調査業務、ヤマネコ等対馬のいきものをモチーフにパッケージや雑貨のデザイン、直営の雑貨店や委託販売等による物販事業などその業務は多岐にわたる。
自然との共生をコーディネートし、
未来の対馬を想像する
対馬の象徴ともいえるツシマヤマネコの生息数は、2000年代まで減少傾向が続き、2010年代前半から後半にかけては若干回復傾向に、現在推移は横ばいとなっています(2020年3月30日ツシマヤマネコ生息状況等調査<第五次調査>より)。とはいえ生息数が100頭前後と依然として少ないツシマヤマネコ。ヤマネコ等の生きものと人との共生を目指して、生産者とともに里地・里山・里海の各種プロジェクトをコーディネートする企業があります。事業内容を「MIT」の代表・吉野元さんに伺いました。
「MITは“触媒”として人と自然をつなぐことをミッションに、コンサル・デザイン・物販を軸に、行政や地元事業者、島外の団体や大学等と連携しながら各種事業を展開するコーディネート組織です。ヤマネコと共生する米づくりを目指す『佐護ヤマネコ稲作研究会』の事務局運営はその一つで、当会の農家さんたちが栽培する減農薬・減化学肥料のお米の販売や広報活動等を行っています。また田んぼのオーナー制を導入し、島内外の方が米づくりやヤマネコ保全に参加できるような仕組みにしています。最近は、対馬の荒れた里山を回復すべく、対馬の林業事業者と連携して新しい事業や法人の立上げの準備に取りかかっています。」
一般社団法人MIT
島おこし協働隊が起業して、対馬で創業10年目を迎える。自然や生き物とともに生きる心豊かな地域社会づくりを目指して、森里川海からの自然の恵みを100年先も享受できる仕組みを企画・提案し、自ら触媒となり、多種多様な人や組織と、さまざまな事業を展開している。
- 住所 上県町佐須奈甲562-24
- 電話 0920-84-2366
- URL https://www.mit-tsushima.com/
日本大学獣医学科卒業後、2013年に地域おこし協力隊として長崎県対馬市に移住した代表の齊藤ももこさんは、初めてイノシシの捕獲を見たとき衝撃を受けるだけでなく、この命をきちんと頂かなければと強く思ったのだとか。その後2016年にdaidaiを立ち上げた彼女は、活動の一環として野生動物をより身近に感じてもらうことを目的にイノシシやシカの革を使ったレザークラフト講座を実施している。
「獣害から獣財へ」、
野生動物をポジティブな循環へ導く
対馬で長年問題となっているのがイノシシ、シカによる獣害。その被害額は2013年時点で1000万円を超え(平成26年度 壱岐・対馬地域鳥獣被害防止計画より)、毎年増減を繰り返しています。そんな害獣を財に導き、野生動物と共存できる社会を生み出そうと活動しているのが「daidai(ダイダイ)」の齊藤ももこさん。彼女が対馬に移住した理由や代表を務めるdaidaiについて詳しく伺いました。
「小さい頃から動物が好きで獣医を目指し大学に行ったんですが、入学後動物と関わり何をしたいかを考え直したんです。そんな時に対馬でインターンシップが募集されていたので参加しました。来た当初はヤマネコの数が減って島の人は困っているだろうと思っていたのですがヤマネコでは誰も困っていなくて、それよりもイノシシとシカをどうにかして欲しいと切望されたんです。その後いろいろありましたが、対馬市が地域おこし協力隊でイノシシ・シカの専門家を募集していたので迷わず参加。それから10年間対馬に住んでいます」と齊藤さん。そんな彼女がdaidaiを立ち上げ、イノシシやシカの捕獲指導や支援、解体処理場の衛生管理、革製品の製造など、イノシシやシカを生活の一部に取り入れられる活動を行いながら、野生動物との共生を目指していました。
daidai
島の人口よりもはるかに多い頭数が生息していると言われる対馬のイノシシやシカは、農作物を荒らし山の草を食べつくす里山の荒廃の原因の一つ。そんな鳥獣被害対策事業として、「獣害を獣財へ」をキーワードに被害対策のコンサルティングや教育活動、さらには肉や革製品の販売などを行う。
- 住所 厳原町今屋敷731
- E-mail info@daidai.or.jp
- URL http://www.daidai.or.jp/