【純真学園大学】「AI時代」に活躍できる 医療人育成プログラムに着手

2020年9月3日(木)

 近年、様々な産業への導入が進んでいるAI(人工知能)。もちろん医療分野においても、AI導入による診療の効率化や診断の正確性向上、さらに遠隔医療への応用などが期待されています。そうした時流の中で純真学園大学は、医療分野ならではの事情を理解した上で臨床業務へのAI導入を図れるような、「医療に特化したAIジェネラリスト」を育成するプログラムをスタートさせました。

早くも「G検定」合格の学部生たちも

医療現場とAI技術者との「橋渡し役」が必要

 看護学科・放射線技術科学科・検査科学科・医療工学科の4学科を擁し、医療現場で活躍するスペシャリストを輩出し続けている純真学園大学。2011年の開学以来、地域医療の発展に寄与することを目指し、医療技術の修得を中心に「心を養う」ことや「感覚を磨く」ことにも注力しています。
 同大学が、AI関連の教育プログラムを本格的にスタートさせたのは、2020年4月から。4学科すべての希望者を対象とした「人工知能学」をカリキュラムに組み込み、初年度は希望者の中から選抜した15名が受講開始しました。新しい講義を立ち上げるにあたって、同大の担当教員たちもAI専門企業の研修を受け、学生たちへの適切な指導ポイントなどを学んだそうです。

 工業系の大学や専門学校などでは、AIに特化した講義を始める動きが盛んですが、医療系教育機関としては非常に先進的な取り組みと言えます。その狙いについて同大の村中 光副学長は、「臨床工学や放射線技師の分野では、AIやコンピュータに関する事柄の一部を学びますが、医学部や関連学部には、それらを本格的に学ぶ機会がほとんどありません。しかし、医療の特殊性を理解している人材でなければ、実効性の高いシステム導入は難しいのではないでしょうか」と指摘します。

 規格が統一されている工業製品などと異なり、年齢・性別はもちろん、病変が生じている箇所や症状の進行度、既往症や薬歴など、患者の状況は1人ひとり違っているのが当然。まさに十人十色、百人いれば百色の患者に対し、常に一定レベル以上のサービスを提供せねばならないのが、医療の難しさです。
 「医療現場を知らないAI技術者に、医療行為ならでは特殊性を“通訳”する、つまり、医療とAIとの『橋渡し』ができる人材を育てようというのが、AI関連教育を開始したきっかけです」(村中副学長)。初年度はまず、「人工知能学」をカリキュラムの中に入れ、受講生の中から、AIやディープラーニングに関する知識と理解度を認定する「G(ジ ェネラリスト)検定」合格者を出すことを目標にしました。

初年度受講生のうち8名がG検定に合格

 医療分野へのAI導入は、産業界でAIが話題になり始めたばかりの頃から試行が繰り返されています。特に、レントゲンやCT、MRIなどとAIとを組み合わせ、画像診断をより速く・正確に…という活用法は、いわゆる第3次AIブーム(2006年~)が始まる前から有力視されてきました。

 ただし前述のように、同じ疾患であっても患者の状態はそれぞれ異なっており、機器側の設定(レントゲン線量など)によっても、得られる画像のコンディションは変化します。そのため、AIに診断用画像を機械学習させる場合、1つひとつのデータに医学的な“見立て”を付加しておかないと、どれだけ多くのデータを読み込ませても診断精度は上がらないのです。
 「そこで本学の人工知能学講座では、一般の工学部とは少し異なる『医療に適応したディープラーニングやAIを学ぶ』という点に注力しました」「医療現場におけるAI活用法は、病気の診断や画像処理ばかりでなく、診断基準の作成や事務的処理、患者登録システムなど多岐にわたります。しかし、そのためのAI教育を実施しているところはほとんど無かった。だから本学がやろうと考えたのです」(副学長)。

 村中副学長はもちろん講義担当の教員たちも、「初年度ではあるものの、選抜した15名全員にG検定を取得してもらいたい」と、大いに意気込んでのスタートでした。その期待に応えて2020年7月、早くも受講生8名がG検定に合格!! そのうちの1人、医療工学科2年の脇坂 布紀さんは、人工知能学の講義を受け始めた当初、「専攻が工学系ですから、もともとAIには興味を持っていましたが、実際に講義を受けてみると意味が判らない概念が多くて戸惑いました。また、AIの仕組みだけではなく、その歴史や変遷の過程も覚えなければならないことに驚きました」との印象を持ったそう。


 同じく合格者の1人、放射線技術科学科2年の儀間 絢音さんも、「私の場合、大学入学後にPython(※)を使ったプログラミングを学ぶまでは、ICT系の勉強はほとんどやったことがありませんでした。だから、人工知能学で出てくる初見の単語や、説明されても意味が判らない内容を自分なりに咀嚼し、“自分の言葉”に変換して覚えるのが大変でした」と、受講の感想を語ります。

 G検定の試験を受けるには、AI関連の知識ばかりでなく、高等学校数学Cレベルの計算力や法律的な知識も、ある程度まで必要になります。ディープラーニングの活性化関数や学習率調整、AIを産業に応用する際の法的・倫理的問題などについて出題されるからです。脇坂さん、儀間さんとも自分なりに勉強法を工夫しながら、見事に検定合格の実績を勝ち取りました。
(※汎用プログラミング言語の1種。数値計算や数列・文字列検索など実務用プログラムのほか、機械学習用プログラムでも多用されている。)

基本理念にも結びつく、数々の先進的な取り組み

 純真大の「人工知能学」は、G検定合格を最終目標としているわけではありません。来年度以降は、受講者をさらに増やす計画であるのに加え、大学院における人工知能学関連講座の新設も前向きに検討。G検定よりさらにハードルが高い、「E資格」の取得を目指します。

「医療現場でAIに関する専門知識を持っている人材は、まだまだ少数。教育機関側に、AIをシステム的に学べる仕組みが無いからです。」(副学長)。だからこそ、まずはディープラーニングに関する広範な知識の中から、最適な判断ができる「ジェネラリスト」を、次いで、AIエンジニアに相応しい能力と医療知識とを有する「スペシャリスト」を育成し、AI時代に活躍できる医療人を育成する。それが延いては、地域医療の発展にも寄与する。そうした考えに基づくAI関連教育である点を、村中副学長は強調します。

 そんな大学側の意向は、受講した学生たちにも伝わっており、例えば儀間さんは、「人工知能学の先生から、『これからの時代の人々は、否応なく“AIを使う人間”と“使われる人間”とに分けられていく』と言われました。G検定に合格したことで、自分は“使う”側の人間になるきっかけを与えられたのだと自覚しています」「Pythonで作ったデータとAIを活用すれば、治療計画のフローチャートを作れそうだ…など、AIの活用法を自ら考える思考法が身についたように感じます」と、確かな手応えをつかんだ様子。
 同じく脇坂さんも、「臨床工学技士の仕事とAIとは、今後、切っても切れない関係になることは明らかです。臨床工学技士の仕事をAIが代わって行うようになったら、私はそれを管理する側になれるよう、今後も勉強を続けたいと思います」と、目標を語ってくれました。


 AI関連教育はもちろん、近年の医療現場では必須の「チーム医療」について、メディカル・ラーニング・センターを活用したシミュレーションを行ったり、今後さらに進むであろうグローバル化に対応すべく、「医学英語検定4級」取得を目指す授業を行ったりと、常に先進的な取り組みに挑戦中の純真学園大学。AIなど先端技術を駆使できる技能と、医療人に求められる人間としての温かみとを兼ね備えた人材が、これからも続々と誕生しそうです。

<純真学園大学>
 
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