【西南学院大学】東南アジアとの“架け橋”になれる人材を新「特定学習プログラム」で育成

2021年1月15日(金)

 急速に進む国際化に対応すべく、2020年4月に新設された西南学院大学の「外国語学部」。単に「喋れる・言葉が判る」だけではなく、会話をする相手の気持ちまで理解できるレベルの語学力習得を目指す同学部に、21年4月から「ベトナム語プロフェッショナル養成プログラム(以下「ベトナム語講座」)」が開設されます。近年、日本で暮らすベトナム人が急増し、日本企業のベトナム進出も相次いでいることから、ベトナムと日本、ひいては東南アジア主要地域と日本との、“架け橋”になれる人材育成を目指すプログラムです。

福岡県内で暮らすベトナム人、10年間で27倍もの急増!!

 学科ごとの学びの枠を超えるため、1学部・2学科制だった文学部を改組し、1学部・1学科制に生まれ変わった同大の外国語学部。より高度な外国語教育の実践に向け、1年次から参加できる海外留学プログラムや、21ヵ国・81大学から受け入れた交換留学生とともに学べる学内環境、東京外国語大学との包括連携による国内留学制度など、様々な独自プログラムを展開中です。

 新たにスタートするベトナム語講座は、現在の「英語研究科目群」、「フランス語研究科目群」、「グローバルコミュニケーションスタディーズ科目群」の3領域に加え、「特定学習プログラム」という形式で実施する予定。つまり、どの科目群を中心に学んでいても、ベトナム語習得に関心があり、将来、自身のキャリアとして役立てたいと希望する学生であれば、通常の授業にプラスして受講できるシステムです。

 就業、あるいは留学などで日本国内に在住するベトナム人の数は、ここ10年の間に10倍以上に増加しました。西南学院大が立地する福岡県の場合は特に、“アジアからの玄関口”である空港と港湾を擁していることから、10年間で約27倍という突出した増加ぶりを示しています。福岡からベトナム市場に進出する企業も増えており、2019年末時点で、50社以上がベトナム国内に事業所を開設しているとのこと(九州経済調査協会調べ)。

 ところが、国内でベトナム語を学べる場所は非常に少なく、教育機関においても、体系立ったベトナム語の教育プログラムを提供しているのは、東京外語大などわずか数校。そのため、ベトナム語を専門にしている日本人通訳も少数で、在日ベトナム人がこれほど増えているにも関わらず、“言葉の壁”が原因となり、人的・物的・文化的交流が今ひとつ活性化していないのが実情です。

 「東京外語大との包括連携に向けた調整を図っていた頃から、同大教授・副学長で日本におけるベトナム語教育の第一人者でもある今井昭夫氏から、ベトナム語学習の必要性について情報交換をしていました」(伊藤彰浩外国語学部長)。さらに、九州の地場企業などで構成される「九州ベトナム友好協会」も、西南学院大に対してベトナム語教育の開始を要望。そうした社会的要請を受けて同大は、ベトナム語講座の開設を決定したわけです。

 

ベトナム語とともに多言語・多文化社会の歴史と現状も学ぶ

 ベトナム語講座の授業は、週1回ペースでスタートする予定。在福岡ベトナム領事館の通訳官、ベトナム政府首脳が参加する国際会議での通訳などの経歴を持つ秋葉亜子氏が、非常勤講師として教鞭を執ります。対面の授業に加え、東京外語大が自校学生向けにWeb上で公開しているベトナム語の学習コンテンツも、包括連携に基づいて利用できるようになりました。

 前述の通り、西南学院大外国語学部に所属する学生の目標は、「相手の気持ちまで理解できるレベルの語学力習得」。聞く・話す能力に加え、相手の考え方や価値観まで理解できなければ、「気持ちを理解」するのは困難です。そこで同大はベトナム語講座の開始に合わせ、前出の秋葉講師による「多言語社会論」という授業科目を新設。外国語学部の学生全員に受講を推奨する計画です。

 「ベトナムは多民族国家。日本とは異なる多言語・多文化社会の歴史と現状を知り、日本におけるベトナム人の就労問題なども知ることが、これからの『多文化共生社会』を生きていく上で重要だと考えています」(伊藤学部長)

 ちなみに福岡県は、10年以上前からベトナムの首都ハノイ市と姉妹都市提携を締結しており、福岡市立図書館は、ベトナム関連の映像資料などを国内で最も多く所蔵する機関です。「この地域に暮らしている若者たちが、ベトナムについて知らない、言葉も判らないというのは、勿体ないこと。ベトナム語講座の開設を機に、まずは本学の学生からベトナムに意識を向けてほしいと思います」(同)。2023年にわが国は、ベトナムとの外交関係樹立50周年を迎えます。同大のベトナム語講座開設は、まさに時宜にかなった取り組みと言えるでしょう。


伊藤彰浩外国語学部長


ベトナム語習得を希望する学生の「プラットフォーム」として

 日本で暮らすベトナム人の増加に伴い、残念ながらベトナム人による犯罪行為も、たびたび報道されるようになりました。「在日ベトナム人が犯罪に手を染めるのは、言葉が通じないばかりに劣悪な就労環境しか与えられない、ちょっとした相談ができる相手もいないという、いわゆる言葉の壁が一番の理由だと思われます。逆に言うと、会話が成立する環境を作れば犯罪抑止にもつながるかもしれないのです」(同)。

 そこで西南学院大は、ベトナム語講座と同じ「特定学習プログラム」の一環として、「日本語教員養成プログラム」を2022年4月からスタートさせる計画です。日本の学生たちの英語、フランス語、ベトナム語のスキルを高めつつ、留学生の日本語学習をサポートできる体制を整えて、双方向から言葉の壁を無くそうという取り組みです。同プログラムの“キー”となるのも、先述の「多言語社会論」。相手国の歴史・文化を理解することは、日本語を効果的に学ばせる上でも重要だからです。

 ベトナム語は、習得が難しい言語の1つと言われています。同大はベトナム語講座の開始後、まずは初級レベル(基本単語の理解と一般的な日常会話能力)の語学力習得を目指します。中級、上級レベルを目指す学生にはベトナムへの短期または長期留学の実現を支援します。

 在福ベトナム領事館も、同大のベトナム語教育を支援するため、交換留学制度が結べそうな同国内の大学を探してくれるとのこと。そうなれば、ベトナムからの留学生と同大外国語学部生たちとの、本格的な学内交流も進むでしょう。

 「ベトナム語講座開始後2~3年程度で、中級~上級レベルのベトナム語習得を目指す学生を10人程度育成し、ベトナムへの留学制度を早期に実現させたい。ベトナム語を学びたい学生のためのインフラを整備し、これからは本学が、ベトナム語習得を目指す学生のための“プラットフォーム”であらねばならないと考えています」(同)。

 

<西南学院大学>
  西南学院は、1916年、アメリカ人宣教師C.K.ドージャーによって創立され、「西南よ、キリストに忠実なれ」という遺訓は、西南学院の建学の精神として今日まで脈々と受け継がれています。現在、7学部13学科の文科系総合大学として、約8,400名の学生が学んでいます。
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